TAMAKOSIの日記

体育・スポーツや教育にかんしてかんがえたことを中心につづっていきます。研究会の情報も案内していきたいとおもいます。

低学年サッカーの授業づくりをかんがえるその4―2011年度大阪GGP報告資料より―

先日、里紗さんのサッカー実践づくりについて議論されたことを報告しました。今回は里紗さんが参考にされた山本実践の実践記録からかんがえていきたいとおもいます。

 

参考にする山本さんの実践記録は2011年度の大阪支部グループ学習プロジェクト(略してGGP)で報告されたものです。

 

目的は①1:1での教える中味を知ること、②低学年の子がわかってできるための山本さんのしかけを知ること、にしておきます。

 

山本さんといえばと語りだすときりがないほど、おもしろい実践がたくさんあります。1つその背景を紹介すると、山本さんは運動文化の戦術・技術的な課題を子どもの言葉(主に生活言語)でひきだし、子どもたちの共通課題にしていくしかけが非常にうまいのです。子どもたちと教師、そして子どもたち同士での対話的な授業づくりが魅力的な実践をたくさんうんできた理由の1つです。

 

さて、山本さんの実践は小1ボールけりゲームで、タイトルは

 

「ボールとまちあわせ」・・・

 

です。〇数字は時間数をさします。またOfはオフェンス、Dfはディフェンスです。

 

授業は前半30秒シュート、中盤ハーフコート1:1、後半オールコート1:1でした。

 

●1:1にした背景

 じゃまじゃまサッカーは「じゃまゾーンをぬけたあとのゴール前では、息がぬけてしまい、ここの場面こそ大事ではないのかと思いながら子どもたちの動きをみていた。シュート場面での攻防こそがボール運動の魅力なのではないだろうか・・・と。なので、今回はおもいきって、1対1のゲームを追究しようと思った」。

 

ということで山本さんは1:1をメインにしております。

 

では、山本実践の目標にそって教える中味を整理していきたいとおもいます。

 

●目標

①攻めるこつがわかり、そのこつをつかって、相手をかわしてシュートができる

<30秒シュートのこつ>

「ボールをころがすよりもおいた方がやりやすい」などたくさん意見がでるも、「シュートがきまるところまでドリブル」「ゴールをみてける」「けったらすぐもどる」の3つにしぼる。

 

<1:1のこつ>

・「だまし」

 ゴールから近いときには「だまし」をつかって「きゅっ」と動き、じゃまする人がずれたらシュート。※左右に進むとみせかけるフェイント動作のことだろう。

 

・「とろうとしたとき、きゅっ」

 ⑮子どもの声「『きゅっ』は、相手がとりにきた瞬間に動くことが大事だ」

 

・「まちあわせ」

 ⑯子どもの感想文より「『まちあわせ』のとき、てきがまだとおくにおるのに、けると、とられやすいから、ちかくにきてからければいい」。ゴールからとおいときには、ボールを少しとおくにけって、自分は、はしってボールと「まちあわせ」してシュート。

 

スピードに関してOfとDfがボールをおなじようにおいかけてOfがおいついた瞬間にシュートしている場面と、対照的にOfがおいついてDfにまだ守られていないのに、ボールをとめてシュートをしなかった場面があった。シュートできる位置だと判断したらすぐにシュートすることが大事。

 

・「背中をつかってブロック」

⑬子どもの感想よりからだをつかってブロックしながらすすむ

 

 

 小学校1年生の子どもながら、Dfとの関係でOfのこつを分析している点は見事です。山本さんが観察して教え合うことを大事にした成果であるとおもいます。

 

 よくよく考えますと、「とろうとするとき、きゅっ」と「まちあわせ」は1つの作戦であるともいえるとおもいます。Dfをひきつけて、ボールを左右にけり、まちあわせをしてシュートしているのではないでしょうか。

 

ということで、「フェイント」「とろうとしたとき、きゅっからの、まちあわせ」「背中をつかってブロック」の3つの作戦(個人戦術)がうまれてきたということですね。

 

 山本さんが子どもたちから気づかされたように、1:1では「相手との動きの関係でとらえられるようにならないと、わかったことにはならない」のであり、「敵の動きがあってからこその自分の動きの判断」であることや「敵の動きを導き出すために自分の動きでしかけることが第1歩である」ことをいかに学習するのかがポイントとなるのでしょう。

 

小学校1年生でここまでいったらすごいですよね。ちなみに山本さんは低学年の子どものわかり方について貴重な感想を示してくれています。

 

 「自分自身の技術についての記述を調べていく中で、気づいたことは、技術のことを書くよりも、他の子に負けたくない思いを強くもっていて、その感情をまず書いてくる子が多かった。そこから、技術のことを書けるようになるには、やはり、わかることが必要になってくる」。

 

最後の部分が重要ですね。

 

さて、次は山本さんのもう1つの目標です。

 

②ともだちのプレーをみて記録したり、よいところをみたり、アドバイスしたりできる。

 

 山本実践ではプレーを見ることを大事にしています。この点も低学年のグループ学習として興味深いのでチェックしていきたいとおもいます。

 

 ⑤「3つのこつをグループでみあおう」では3つを同時にみるのが難しかったため、担当をきめていたグループを紹介し、それぞれの見る位置も子どもたちの意見をもとにきめていった。

 

 ⑩じゃまありシュートのビデオをみせる。同じシーンを何回もみたことでイメージがつかめたようで、急にシュートがきめられるようになった子が何人かいた。

 

 

 ⑭「どこで、できなくなっているかカード」をだしてグループでできないところをみんなで教えていくようにと伝えた。このカードによってへたな子に目がむけられるようになった。さらに⑯ペアでの教え合いの時間を設定することで、ペアの子がずっとかかわり、会話がふえた。一方通行の声かけではなく「何がまだ無理かきいて」とか「まちあわせが苦手だから」とか相手の要求にあわせて2人で考えていた様子がみられた。最後にやっと「自分は相手にむかってボールをけってしまっていた」と気づく子もいた。

 

⇒ 山本さんは単元の前半、プレイだけではなく観察による発見を大事にすることで、感覚的ではない有効な方法を、子どもから言葉をひっぱりだしてみんなで「わかる」ことをめざしています。また映像をかいしてより具体的な「わかる」を保障しようともしています。こうして丁寧な「わかる」ためのはたらきかけがあったからこそ「うまい×へた」ペアでの教え合いが有効にはたらいたのだとおもいます。

 

以上、山本実践からサッカーの1:1で教える中味(わかる)と「わかって、できる」ためのしかけをみてきました。

 

じゃまじゃまサッカーはある意味、複数の人数で勝負するために1:1の状況を意図的につくらないことが、ドリブルシュートを保障する利点としてかんがえられます。

 

しかし一方で、小学校1年生でもここまで1:1で豊かに学ぶ中味があるのです。この1:1での学びがあったときに、じゃまじゃまサッカーのボール1つバージョンではどのような攻防がうまれるのでしょうか。

 

サッカーのたのしみ方が質的に高まっていくその先をみすえたときに、どのような教材をつかってどのような指導系統がよいのでしょうか。

 

低学年における論点がすこしみえてきましたようなきがします。

 

 

最後に、山本実践の経過をメモしておきます。興味がある方はどうぞ。

 

●授業の様子(数字は時間数、文は実践記録からのぬきだしやまとめです)

<ボール操作から30秒シュートまで>

①2人パスまで ②じゃんけんボールまで ③30秒シュート

④グループ発表:30秒シュート「どうしたらたくさんシュートがきまるだろうか」

 授業で見つけたことや感想から「シュートがきまるところまでドリブル」「ゴールをみてける」「けったらすぐもどる」の3つにこつをしぼる。

⑤シュート練習「3つのこつをグループでみあおう」

 観察の仕方を説明。目線をみる人は目がみえる位置でみる。なんと中にはゴールだけみて、シュートするときにボールをみないでからぶりする子もいたので、両方みるようにいうべきだったときづいた。

⑥シュート練習「3つのこつをつかって30秒シュートをしよう」

 練習ではおちついてできたのに30秒になるとあわててうつ。時間内にたくさんとおもうだけで頭が忙しくなるようだ。みている子も場面がおおすぎるとポイントがつかめないだろう。

 

<ハーフコート1:1>

⑦じゃまありシュート「じゃまがいても、どうしたらシュートがはいるだろうか」

 ハーフコート1対1ではかわす動作もなくけって、じゃまする子にボールをあてていたり、はじめからおもいっきりけってコート外にだしていたり、敵をかわすことに気づかない子がおおくいた。しかし感想には「ボールとまちあわせ」「とろうとしたとき、きゅっとまがる」という表現があった。サッカーでは自分から未来の自分へのパスができるのだ。この言葉をみんなのものに。

⑧じゃまありシュート「だましときゅっとうごくことを、れんしゅうしよう」

 雨のため体育館だがコートがせまくなりまたボールもちがい床もすべってやりにくそう。運動場でできる日にするべき。

⑨じゃまありシュート「まちあわせをせいこうさせるためのこつは?」

⑩じゃまありシュート「3つのこつを、つかってみよう」

 教室で課題を説明したあとで、ビデオをみせる。同じシーンを何回もみたことでイメージがつかめたようで、急にシュートがきめられるようになった子が何人かいた。

 

<オールコート1:1>

⑪シュートゲーム「シュートゲームのやり方見かたがわかったか」

 オールコート1対1。はじめはおもいっきりけってすぐに外にだすことがおおかったが、徐々にそのあとが続かないときづいた子もいたようだ。

⑫シュートゲーム「スタートのまえに なんのこつをつかうか決めておこう」

 シュートがきまる子がふえた。Hが背中をつかって相手をブロックしていた。「秘密兵器やってん」といっている。Mも感想にからだをつかってブロックしながらすすむというようなことがあった。コートの幅がせまいのかまだ外にだしてしまう子がおおい。

⑬シュートゲーム「きょうだいはんで教え合おう」

 教室でHに背中をつかってブロックするところをみせてもらい、みんなにもしめす。記録には「きゅっとやるこつが、体をつかって、ぎゅっとやってるから、〇の中にぎとかこう」となった。感想ではKが「Nさんとやるばんがきて、Nさんは強いから勝てないと思いました。Tが『ちょっとよわきにしたりやあ』といって、なかなかネットにはいらないからNさんは強いと思いました」の文。「よわき」について話し合いたい。

⑭シュートゲーム「班の人ができないところの練習をしよう」

 教室で「よわき」について話し合う。Kの感想をよんでどう思ったのかきいた。M「すぐ勝負がきまっておもしろくない」H「よわきだと強くなられへん」。よわきがいい理由は、Ka「勝ちたいからだ」O「ぜんぜんボールがとれないからだ」。結局クラスの2人以外全員がよわきに反対した。山本さんはそれぞれの気持ちをうけとめながら「練習ではだんだんはやくしてもらうようにしたらいいんじゃないかな」とまとめたという。Dfにレベル1から4までがでてきたよう。

 そして「どこで、できなくなっているかカード」をだしてグループでできないところをみんなで教えていくようにと伝えた。ただへたな子を教えているときに1人が教え他の子がみていることが多かった。次はペアにする。

⑮話し合い(教室)

 練習のための2人組については子どもたちからうまい子とまだシュートがきまっていない子が組みになる案がでた。また対戦相手は「自分とおなじぐらいの強さの子とたたかいたい」という答えにみんな拍手した。また「教え方を教えてください」という感想があったので、教え方の交流をする。

⑯シュートゲームの試合をみて、自分のペアの人がこれからどんな練習をすればいいのか考えよう

 コートを広くしたことですぐにボールが外にでることは少なくなったが、ボールコントロールができない子どうしの試合は、すぐにでてしまう。

⑰「試合でできなかったことを、どこをどうすればできるようになるかを考えながら、何回も練習しよう」

 どこまでボールにくっついていけるか、ボールにおいついた後、自分とゴールとの関係で、どう動くか、瞬時の判断が大事であることがよくわかる。その判断ができないとすぐに追いつかれてしまう。これをビデオをみながら説明することにした。

⑱「わからないところ、うまくいかないところを2人ではなしあって、それにあう練習を考えてやろう」

ビデオでシュートできる場所だとわかったらすぐにシュートすることの大切さを説明する。

⑲感想を読み合う(省略)